序章:大国の仮面が剥がれた日
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近年、その強硬な姿勢から「戦狼外交」と揶揄されてきた中国の外交スタイルに、新たな、そしてある意味で滑稽な一面が加わった。 それは「泣きつき外交」とでも呼ぶべき、自らの主張が国際社会で受け入れられないと見るや、他国に電話をかけ、同情と支持を切々と訴えるという驚くべき行動だ。その無様な姿は、自らを「大国」と称する権威とは程遠く、国際社会に失笑と侮蔑の念を広げている。
この一連の騒動の引き金となったのは、日本の高市早苗首相による「台湾有事」に関する国会答弁である。 この発言に過剰とも言える反応を示した中国政府は、まず同盟国アメリカに泣きつき、あえなく撃沈。次に矛先を向けたのは、欧州の大国フランスだった。中国の王毅外相は、フランスのマクロン大統領の外交顧問に対し、電話で日本の「非」を訴え、台湾問題における自国の正当性を主張し、支持を要請した。
しかし、その結果は中国の思惑とは大きくかけ離れたものだった。フランス側は中国の主張を鵜呑みにすることなく、むしろ日中双方に自制を求め、特に中国に対しては「緊張を高めないことが必要だ」と釘を刺すという、冷静かつ毅然とした態度を示したのだ。
アメリカに続きフランスにも事実上見捨てられた中国。その姿は、まるでクラスのいじめっ子が、自分の思い通りにならないと先生や他の生徒に泣きついて言い訳をするかのようだ。本稿では、この一連の「泣きつき外交」の全貌を、徹底的に解剖する。高市首相の発言の真意、中国が異常なまでに焦る国内事情、そしてアメリカとフランスが下した冷静な判断の背景とは何か。さらに、この事件が浮き彫りにした中国の国際的孤立と、「戦狼」の仮面の下に隠された脆い実像に迫る。これは単なる外交上の出来事ではない。世界のパワーバランスが地殻変動を起こしている今、日本の立ち位置と未来を考える上で、全ての日本人が知るべき物語である。
第1章:発端の一撃 – 高市首相「台湾有事」発言の真意と衝撃
すべては、2025年11月7日の衆議院予算委員会での質疑から始まった。立憲民主党の岡田克也氏の質問に対し、高市早苗首相は、台湾有事に関する日本の安全保障上の見解を述べた。
「例えば、台湾を完全に中国北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。…それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」
この発言は、日本の安全保障政策における従来の政府見解を逸脱するものではない。日本の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」や、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」の認定は、個別具体的な状況に応じて総合的に判断される、という基本方針に沿ったものだ。 にもかかわらず、この発言は中国の逆鱗に触れ、官民を挙げたヒステリックな反発を引き起こすことになる。
1-1. 「存立危機事態」とは何か? – 日本の安全保障の根幹
高市首相が言及した「存立危機事態」とは、2015年に成立した平和安全法制によって定められた概念である。これは、以下の3つの要件を満たす場合に認定される。
- 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したこと。
- これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。
- これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと。
この事態が認定された場合、日本は限定的ながら集団的自衛権を行使し、自衛隊による武力行使が可能となる。高市首相の発言は、中国が台湾に対して大規模な武力侵攻を行った場合、それは台湾一国の問題に留まらず、日本の存立そのものを脅かす「存立危機事態」に該当し得る、という認識を示したものだ。
1-2. なぜ台湾有事は日本の危機なのか? – 地政学的な現実
高市首相の発言の背景には、否定しようのない地政学的な現実がある。台湾は、日本のシーレーン(海上交通路)の生命線上に位置している。日本が輸入する原油の約9割、食料の多くが台湾周辺の海域を通過する。もし台湾が中国の支配下に置かれ、この海域が自由に航行できなくなれば、日本の経済、そして国民生活は致命的な打撃を受ける。
さらに、軍事的な観点からも台湾の戦略的重要性は計り知れない。台湾の西側に位置する与那国島は、台湾からわずか110kmしか離れていない。台湾が中国の軍事拠点となれば、日本の南西諸島は常に中国の軍事的脅威に晒されることになる。これは、日本の安全保障環境の根本的な悪化を意味する。
つまり、高市首相の発言は、感情論やイデオロギーに基づいたものではなく、日本の国益と国民の安全を守るための、極めて現実的かつ論理的な帰結なのである。
1-3. 中国の猛反発 – なぜ彼らはこれほどまでに騒ぐのか
日本の首相による、安全保障上の当然の懸念表明に対し、中国側は常軌を逸した反発を見せた。
- 中国外務省: 「中国の内政への乱暴な干渉で、『一つの中国』原則に深刻に背く」「強い不満と断固とした反対」を表明し、発言の即時撤回を要求。
- 中国国防省: 「日本が台湾情勢に武力介入すれば、中国軍の鉄の壁の前で必ず血を流すことになる」と、露骨な軍事的脅迫を行った。
- 在大阪中国総領事・薛剣氏: SNS上で「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と、一国の外交官とは思えない殺害予告とも取れる暴言を投稿。
- 国連での非難: 中国の傅聡国連大使は、国連総会の場で高市首相の発言を「厚かましい挑発的発言」と非難し、日本は常任理事国になる資格がないと断じた。
この異常なまでの反発の背景には、習近平政権が抱える深刻な国内事情と、台湾統一への異常なまでの執着がある。彼らは、高市首相の発言が、自らの野望の核心を突くものであったが故に、ここまで激しく動揺しているのだ。次章では、その深層心理をさらに詳しく分析していく。
第2章:龍の焦燥 – 中国が「泣きつき外交」に走らざるを得ない国内事情
中国が国際社会の失笑を買うことも厭わず、「泣きつき外交」という前代未聞の行動に出た背景には、習近平政権が直面する深刻な内憂外患がある。かつての「戦狼外交」という威嚇的な態度の裏には、実は脆く、不安に満ちた政権の実像が隠されているのだ。
2-1. 「一つの中国」原則という”神話”の崩壊危機
中国共産党が自らの正統性の根幹に据えているのが、「一つの中国」原則である。これは「世界に中国は一つしかなく、台湾は中国の不可分の一部であり、中華人民共和国政府が全中国を代表する唯一の合法政府である」という主張だ。しかし、これはあくまで中国側の一方的な主張であり、国際社会、特に日本やアメリカがこの原則を完全に受け入れているわけではない。
- 日本の立場: 1972年の日中共同声明では、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」としつつ、台湾が中国の領土であるという中国の主張については、「十分理解し、尊重し」と表現するに留めている。これは、台湾の地位について日本独自の判断を留保した形であり、中国の主張を承認したわけではない。
- アメリカの立場: アメリカも同様に、「One China Policy(一つの中国政策)」のもと、中国の主張を「acknowledge(認識する)」としているが、「accept(受け入れる)」とは表明していない。同時に、台湾関係法に基づき台湾の自衛能力の維持を支援し、台湾への武力行使には反対する姿勢を明確にしている。
高市首相の発言は、この「一つの中国」という中国共産党が作り上げた”神話”の曖昧さを突き、台湾有事が国際的な安全保障の問題であることを明確に指摘した。これが、自らの統治の正当性を揺るがしかねない一撃と感じたからこそ、習近平政権は過剰に反応したのだ。
2-2. 経済失速と国内不満の爆発 – 習近平政権の足元はぐらついている
かつてのような高度経済成長が望めなくなった現在の中国では、不動産バブルの崩壊、若者の高い失業率、地方政府の巨額債務など、深刻な経済問題が山積している。国民の不満は日に日に高まっており、共産党への求心力は著しく低下している。
このような状況下で、習近平政権が国民の目を国内問題から逸らし、愛国心を煽って政権への支持を繋ぎ止めるために用いる常套手段が、対外的な強硬姿勢である。特に台湾問題は、ナショナリズムを最も高揚させやすいテーマであり、「台湾統一」という「偉大な中華民族の復興」の象徴を成し遂げることで、自らの権威を高めようという思惑がある。
しかし、今回の高市発言に対する国際社会の冷静な反応は、中国の思惑通りに事が進まない現実を突きつけた。アメリカやフランスが日本の立場に一定の理解を示したことで、中国は国際社会で孤立し、その権威は逆に失墜した。国内の不満を逸らすための対外強硬策が裏目に出たことで、習近平政権の焦りは一層深まっているのだ。
2-3. 「戦狼外交」の限界と破綻
習近平政権下で顕著になった「戦狼外交」は、各国の中国に対するイメージを著しく悪化させた。 高圧的な態度で他国を屈服させようとするスタイルは、国際社会からの反発を招き、結果的に中国を孤立させた。 近年、その反省からか、やや穏健な姿勢を見せる場面もあったが、今回の騒動でその本質が何ら変わっていないことが露呈した。
威嚇が通用しないと見るや、今度は泣き落としにかかる。この一貫性のない稚拙な外交は、国際社会における中国の信頼をさらに貶める結果となった。彼らは、外交とは対話と交渉、そして相互尊重の上に成り立つという基本的な原則を理解していない。力で脅すか、泣いて同情を請うか。その二者択一しか持ち合わせていない外交がいかに脆弱なものであるか、今回の件は明確に示している。大国を自称しながら、その実態はまるで駄々をこねる子供のようである。
第3章:最初の誤算 – アメリカはなぜ中国の”泣きつけ”を袖にしたのか
高市首相の発言に狼狽した中国が、最初に助けを求めてすがりついたのは、最大のライバルであるはずのアメリカだった。習近平国家主席は、トランプ米大統領(動画の文脈より、現職の米大統領と推定)との電話会談で、台湾問題に関する自国の立場を切々と説明し、日本の行動を牽制するよう求めたとされる。
しかし、その期待は無残にも裏切られる。トランプ大統領は中国の主張に同調することなく、むしろその翌日に行われた高市首相との電話会談で、日米同盟の揺るぎない絆と、台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認したのだ。これは、中国の「泣きつき外交」に対する、アメリカからの明確な「NO」の回答だった。
3-1. 揺るぎない日米同盟 – 「台湾有事」は「日米同盟の有事」
アメリカが中国の甘い期待を退けた最大の理由は、強固な日米同盟の存在である。アメリカにとって、日本はアジア太平洋地域における最も重要な同盟国であり、地域の安定と繁栄の礎である。その日本が「存立の危機」に瀕する可能性のある台湾有事を、アメリカが看過することはあり得ない。
近年、日米両国は「台湾有事」を想定した共同作戦計画の策定を進めるなど、連携を緊密化させている。これは、「台湾の有事は日本の有事であり、すなわち日米同盟の有事である」という認識が、両国間で完全に共有されていることを意味する。
中国は、日米の間に楔を打ち込もうと画策したのかもしれないが、それは根本的な見込み違いだった。台湾海峡の平和と安定という共通の戦略的利益の前では、中国の泣き落としなど通用するはずもなかったのだ。
3-2. アメリカの対中認識 – 競争相手であり、脅威である
バイデン政権発足以降、アメリカは中国を「唯一の競争相手」と位置づけ、その軍事的、経済的、技術的な挑戦に対抗する姿勢を鮮明にしている。特に、力による一方的な現状変更の試み、とりわけ台湾に対する軍事的圧力に対しては、極めて強い警戒感を持っている。
アメリカは、中国が台湾を併合すれば、西太平洋における軍事バランスが根本的に覆り、アメリカの国益が深刻に損なわれると理解している。そのため、台湾関係法に基づき、台湾が必要な防衛能力を維持できるよう支援を続けるとともに、いかなる形の武力行使にも断固として反対している。
このような明確な対中認識を持つアメリカが、中国の言い分を聞き入れ、同盟国である日本をないがしろにする選択をするはずがなかった。中国の「泣きつき」は、アメリカの戦略的な計算と国益の前で、あまりにも無力だったのである。
3-3. 国際秩序の守護者としての矜持
アメリカは、自らが主導して築き上げてきた戦後の国際秩序、すなわち、法の支配、航行の自由、人権の尊重といった価値観を守る責任があると考えている。中国による台湾への威嚇は、この国際秩序の根幹を揺るがす挑戦である。
ここで中国に譲歩すれば、世界中の権威主義国家に「力による現状変更は許される」という誤ったメッセージを送ることになる。それは、ウクライナに侵攻したロシアを利することにも繋がりかねない。
アメリカが中国の「泣きつき」を拒絶したのは、単に日米同盟や自国の利益のためだけではない。自由で開かれた国際秩序を守るという、世界のリーダーとしての矜持が、そうさせたのである。中国は、外交の駆け引きのレベルだけでなく、根本的な価値観のレベルでも、アメリカ、そして自由主義世界から見放されたのだ。
第4章:二度目の屈辱 – フランスはなぜ中国の”告げ口”を退けたのか
アメリカにあえなく袖にされた中国が、次に頼ったのが欧州の雄、フランスだった。2025年11月27日、中国の王毅外相は、フランスのエマニュエル・ボンヌ大統領外交顧問と電話会談を実施。 この会談で王毅は、高市首相の台湾に関する発言が「挑発的」であり、「中国の主権と領土保全を侵害するものだ」と激しく非難。 そして、フランスに対し「一つの中国」原則を順守し、この問題について中国を支持するよう強く要請したのだ。
これは、他国の首脳の発言を第三国に「告げ口」し、味方につけようとする、前代未聞の稚拙な外交戦術であった。しかし、百戦錬磨のフランス外交は、中国の浅はかな思惑を見抜き、冷静かつ毅然とした対応でこれを一蹴した。
4-1. フランスの冷静な対応 – 「緊張を高めるな」という明確なメッセージ
中国側の発表によれば、この会談はあたかも中国の主張がフランスに受け入れられたかのような印象を与えるものだった。しかし、その直後、フランス大統領府の高官がメディアに語った内容は、中国のプロパガンダを打ち砕くものだった。
その高官は、日中双方に自制と緊張緩和を呼びかけつつも、「特に中国には事態の悪化を控えることが求められる」と明確に述べたのだ。 これは、高市首相の発言そのものよりも、それに対して軍事的な脅迫や外交的な圧力をエスカレートさせている中国側の態度を問題視していることを示唆している。
フランスは、中国の「告げ口」に安易に同調するのではなく、問題の本質を見極め、地域の平和と安定を損なう行動をとっているのはどちらか、という冷静な判断を下したのである。これは中国にとって、アメリカからの拒絶に続く、二度目の屈辱的な外交的敗北であった。
4-2. フランスのしたたかな対中政策 – 「パートナー、競争相手、ライバル」
フランス、そしてEUは、中国との関係を「パートナー」「競争相手」「体制上のライバル」という3つの側面で捉える、多角的で現実的な戦略をとっている。
- パートナー: 気候変動やパンデミック対策など、地球規模の課題に対処する上では協力する。
- 競争相手: 経済や技術の分野では公正な競争を求める。
- 体制上のライバル: 人権や民主主義といった価値観においては、異なる体制を持つライバルと認識する。
この戦略に基づき、フランスは中国との経済的な結びつきを維持しつつも、安全保障や人権問題では決して譲歩しない姿勢を貫いている。特に、インド太平洋地域においては、自らを「インド太平洋国家」と位置づけ、航行の自由や法の支配といった原則を重視。日本やアメリカ、オーストラリアなどと連携を深めている。
このようなしたたかな外交戦略を持つフランスが、中国の一方的な主張に与し、長年のパートナーである日本との関係を損なうような選択をするはずがなかったのだ。
4-3. 中国のダブルスタンダードへの痛烈なカウンター
さらに、フランスが中国の「泣きつき」に冷ややかだった背景には、中国自身の矛盾した行動がある。実は中国は、フランスが主権を持つ南太平洋の海外領土、ニューカレドニアの独立運動を水面下で支援している疑いが持たれているのだ。
ニューカレドニアは、世界のニッケル埋蔵量の約4分の1を占める戦略的に重要な地域である。もし独立すれば、中国がその影響力を強め、経済的・軍事的な足がかりを築くのではないかと懸念されている。
他国の領土(しかもフランス自身の領土)の分離独立を煽りながら、台湾問題では「内政干渉だ」「主権の侵害だ」と叫ぶ。このあからさまなダブルスタンダードを、フランスが見過ごすはずがない。王毅の「告げ口」は、フランスにとっては偽善に満ちた戯言にしか聞こえなかっただろう。むしろ、「自らの足元を見てから物を言え」と、痛烈なカウンターを食らった形となったのだ。
第5章:剥がれ落ちるメッキ – 国際社会が目撃した「張り子の虎」の正体
アメリカ、そしてフランスへの「泣きつき外交」の連続失敗は、中国が自ら築き上げてきた「大国」というイメージのメッキを、国際社会の目の前で無残にも剥がし去る結果となった。かつて世界を威圧した「戦狼」は、今や誰からも相手にされない「張り子の虎」へと成り下がったのだ。
5-1. 「告げ口外交」が露呈した小物感
一国の外交トップが、他国の首脳の発言をわざわざ第三国に電話で「告げ口」し、不満を訴え、支持を求める。このような行動は、国際外交の常識では考えられない。それは、対等な国家間の関係構築を放棄し、自らを被害者の立場に置くことで同情を引こうとする、極めて幼稚で小物感漂う振る舞いである。
ネット上では、この中国の行動に対して、失笑と侮蔑のコメントが溢れた。
「告げ口外交は小物感溢れてて草」「味方を増やそうと必死だなw」「大国を自称しながらやってる事は小学生」
これらの反応は、一般の人々が中国の外交姿勢に感じている違和感と嫌悪感を的確に表している。力で押さえつけるか、泣き落とすか。その両極端な行動は、自信のなさの裏返しであり、真の「大国」が持つべき品格や寛容さとは無縁のものである。
5-2. 矛盾だらけの主張 – 自らの首を絞めるブーメラン
中国の主張は、ことごとく矛盾に満ちており、その多くがブーメランのように自らに突き刺さっている。
- 「主権侵害」のブーメラン: 日本の首相の発言を「主権と領土保全を侵害するものだ」と非難しながら、自らはフランス領ニューカレドニアの独立運動を煽動する。 このダブルスタンダードは、国際社会からの信頼を完全に失わせる。
- 「内政干渉」のブーメラン: 台湾問題を「純粋な内政問題」と主張しながら、アメリカやフランスを巻き込んで国際問題化させようと必死になる。その行動自体が、台湾問題が単なる内政問題ではないことを自ら証明してしまっている。
- 「平和的解決」のブーメラン: 「台湾問題の平和的解決」を口にしながら、台湾周辺での軍事演習をエスカレートさせ、軍事的脅迫を繰り返す。平和を最も脅かしているのは、一体誰なのか。
- 「インフラ破壊」のブーメラン: 他国の主権を声高に叫ぶ一方で、台湾本島と離島を結ぶ海底ケーブルを、中国籍の船舶が意図的に切断したとされる事件が相次いでいる。 これは、台湾の通信インフラを破壊し、社会を混乱させることを狙った「グレーゾーン攻撃」であり、他国の主権と安全を著しく侵害する行為に他ならない。
これらの矛盾した言動は、中国の主張から説得力を奪い、その孤立をさらに深める悪循環を生み出している。
5-3. 国際社会の包囲網 – G7の結束と自由主義世界の覚醒
中国の横暴な振る舞いに対し、国際社会、特にG7(先進7カ国)を中心とする自由主義世界の結束は、かつてなく強まっている。G7の首脳会合や外相会合では、ほぼ毎回「台湾海峡の平和と安定の重要性」が共同声明に盛り込まれ、力による一方的な現状変更の試みに反対する強い意志が示されている。
今回の件で、フランスが中国の圧力に屈せず、日本との連携を重視する姿勢を見せたことは、この国際的な包囲網が欧州にまで確実に広がっていることを証明した。中国は、日本一国に圧力をかければ屈服させられると高を括っていたのかもしれないが、その背後には、価値観を共有する多くの国々が連携しているという現実を、今こそ思い知るべきである。
もはや、中国の脅しや甘言に惑わされる国は少ない。世界は、その危険な野心と脆い実像に気づき始めているのだ。
第6章:日本の針路 – “泣きつき”中国にどう向き合うべきか
一連の騒動は、中国という国家の本質と、日本が置かれている厳しい安全保障環境を改めて浮き彫りにした。威嚇と泣き落としを使い分ける不安定な隣国に対し、日本は今後どのように向き合っていくべきなのだろうか。感情的な反発や過度な楽観論を排し、現実に基づいた冷静かつ毅然とした戦略が求められる。
6-1. 抑止力の強化 – 力の空白は侵略を誘発する
まず何よりも急務なのは、日本の防衛力を抜本的に強化し、中国に軍事的な選択肢を取らせない強力な抑止力を構築することである。歴史が証明しているように、力の空白は侵略を誘発する。平和を維持するためには、平和を守るための力が必要不可欠だ。
- 防衛費の増額: GDP比2%を念頭に置いた防衛費の増額を着実に実行し、自衛隊の装備の近代化、継戦能力の向上を図る。
- 反撃能力の保有: 他国からの武力攻撃に対し、必要最小限度の自衛の措置として、相手国の領域にある軍事目標などへ反撃する能力を整備・向上させる。これは、攻撃を躊躇させる上で極めて有効な抑止力となる。
- 南西諸島の防衛強化: 台湾に最も近い南西諸島における部隊配備やインフラ整備を進め、有事への備えを万全にする。
これらの取り組みは、決して中国を挑発するためのものではない。日本の平和と独立を守り、国民の生命と財産を保護するための、主権国家として当然の権利であり、責務である。
6-2. 同盟国・同志国との連携深化 – 法の支配に基づく国際秩序の維持
日本一国で中国の脅威に対抗することは困難である。唯一の同盟国であるアメリカとの関係をさらに深化させるとともに、価値観を共有する「同志国」との連携を多層的に強化していくことが不可欠だ。
- 日米同盟のさらなる強化: 情報共有、共同訓練、装備の相互運用性向上などを通じ、日米同盟の抑止力と対処力を一層高める。
- クアッド(日米豪印)の枠組み活用: 安全保障、経済、インフラ、先端技術など、幅広い分野で協力を推進し、「自由で開かれたインド太平洋」を実現する。
- 欧州諸国との連携: 今回フランスが示したように、欧州諸国もインド太平洋地域への関与を強めている。 イギリス、ドイツ、イタリアなどNATO主要国やEUとの間で、安全保障対話や共同訓練を拡大していく。
- AUKUSとの協力: 米英豪の安全保障の枠組みであるAUKUSとも、サイバー、AI、極超音速兵器などの先端技術分野で連携を模索する。
これらの国々と連携し、「法の支配」や「航行の自由」といった国際社会の基本的なルールを、中国を含む全ての国が順守するよう、外交的な圧力をかけ続けていく必要がある。
6-3. 毅然とした外交と対話のチャンネル維持
中国に対しては、その横暴な振る舞いや矛盾した主張に対し、断固として「NO」を突きつける毅然とした外交姿勢が求められる。今回の高市首相の発言のように、日本の国益に関わる安全保障上の懸念については、臆することなく明確に表明し、中国側の不当な圧力には決して屈してはならない。
一方で、不測の事態を避けるためにも、中国との対話のチャンネルを完全に閉ざすべきではない。首脳・閣僚レベルでの意思疎通を維持し、防衛当局間のホットラインなどを活用して、偶発的な衝突を回避するための危機管理メカニズムを構築しておくことも重要である。
ただし、その対話は、中国のペースに巻き込まれるものであってはならない。あくまで日本の国益を基軸に据え、主張すべきは堂々と主張し、譲れない一線は明確に示す。この「原則ある外交」こそが、不安定な隣国と付き合っていく上で、唯一の有効な道なのである。
結論:世界の潮目は変わった – 日本が果たすべき役割
中国の「泣きつき外交」が国際社会に晒した無様な姿は、単なる外交的な失態に留まらない。それは、習近平体制の限界と、中国が主導しようとする権威主義的な国際秩序の脆さを象徴する、歴史的な転換点であった。
高市早苗首相の国会答弁という「一撃」は、中国という「張り子の虎」の仮面を剥がし、その下に隠された焦りと孤立を白日の下に晒した。アメリカの揺るぎない同盟へのコミットメント、そしてフランスの冷静かつ毅然とした対応は、自由と民主主義、法の支配といった価値を共有する国々の結束が、独裁国家の圧力に決して屈しないことを明確に示した。
世界の潮目は、もはや変わったのだ。
この大きな地殻変動の中で、日本が果たすべき役割は計り知れない。地政学的に中国と直接向き合う最前線に位置する日本は、アジア太平洋地域、ひいては世界の平和と安定の鍵を握る「要石」である。
我々は、この責任の重さを自覚し、臆することなく行動しなければならない。自らの国を自らで守る気概を持ち、防衛力を抜本的に強化すること。日米同盟を基軸としながら、クアッド、欧州諸国といった同志国との連携を多層的に深化させ、中国に対する国際的な包囲網を主導すること。そして、中国の不当な圧力には毅然と対峙し、日本の国益と、我々が信じる普遍的価値を守り抜くこと。
中国の「泣きつき外交」は、我々に侮りではなく、むしろ確信を与えてくれた。正しい原則と、それを共有する仲間との連帯があれば、いかなる脅威にも打ち勝つことができるという確信を。今こそ、日本は自信と誇りを取り戻し、自由で開かれた国際秩序の守護者として、その歴史的使命を果たしていくべき時なのである。道のりは険しいかもしれない。しかし、その先には、真の平和と繁栄に満ちた未来が待っているはずだ。


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